カテゴリ:見た弾いたオルガン( 160 )

ドイツ・ハレ、マルクト教会

G.F.ヘンデルの生まれ故郷、ハレのマルクト教会で、オルガンコンサートを弾いてきた。
これがその教会。マルクト(=市場)教会というだけあって、広場に面した町一番の教会。
広場の真ん中にはヘンデル像が。
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この教会にはその昔、亡くなったばかりのM.ルターの亡骸が、故郷に戻される途中に停泊したという歴史もあり、ルターのデスマスクも見ることができる。
クラナッハの絵画でみる顔よりももっと肉厚の、典型的な「ドイツ人顔」って感じだった。

f0161652_2175491.jpg歴代有名人もオルガニストを勤めた。
S.シャイト、
F.W.ツァッホウ(ヘンデルの教師)、
W.F.バッハ(J.S.バッハの息子)
などなど。
賑やかな町中から一歩、教会の中へ。ひやっと涼しい、心落ち着く別世界。
素晴らしいバロックのケースに収められたオルガンが、教会後方のバルコニーを満たしていた。圧巻!
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下から見上げたところ。ものすごく大きいのにとても上品でもある。色々な大きさの窓に美しく配分されたパイプたち。一番上では等身大の天使たちが楽器を奏でている。
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f0161652_21315379.jpg演奏台。
このオルガンは、昨年新たに整音が与えられ、新しい演奏台を取り付けられたばかり。(W.Sauer,
Frankfurt Oder)
実は私、3年前にもここで演奏させていただいたのだが、前回とはベツモノのオルガンになっていた!低音が更に充実して、柔らかいロマンティックな響き。演奏台もきれいになって、扱いやすかった。










ところで、よく聞かれるのだが、ケースはバロック建築なので、下から一目見て「これはバロックのオルガン」と思いがちだが、中々そう行かないところがオルガンの面白いところ。
たとえば、このオルガンの歴史を辿ると、1713~16年の間に一番初めのオルガンが、
このケースと共に建てられたのだが(C.Cuntius クンティウス・オルガン)、
その後、時代が進むと共に、それぞれの時代の趣味に合わせた音色や機能の改造がされたり、修理&修復を繰り返していく上で、オリジナルのものは変形されたり取り外されて、新しいものが組み込まれていった。しかしヨーロッパでは、「まだ使えるもの、良いものはそのまま受け継ぐ」という姿勢なので、こうやってオルガンケースや一部のパイプは18世紀や19世紀のものが、多少手直しされつつも受け継がれている。
一台の楽器の中に、いろんな時代がパッチワークされていることがあるのだ。
だから、バロックのケースから響いてくるのは、バロックの響きとは限らない。
日本にあるのは新しいオルガンばかりなので、そんな経験もできず、留学したての頃、
どうしてバロック・ケースのオルガンから、きれいなクレッシェンドのかかった(スウェルという強弱機能を使う。ロマン派時代に始めて現れる)ロマンティックな響きが流れてくるのか、しばらく不思議だったものだ。

教会の入り口に張られたコンサートの案内。
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この教会にはもうひとつ有名な話が残っている。
バッハがまだヴァイマールにいた頃、この教会のオルガニストの席が空いて、教会はバッハに後任への招待状を送っている。しかし、それを知ったヴァイマール伯がバッハを引き止めておくためにお給料を値上げしたため、バッハは結局ここへ転職することはなかったとか。その後悔からか、バッハへの未練&憧れか、新しいオルガンが1716年に完成したとき、J.S.バッハに再び、試奏&お披露目演奏会を頼んでいるのだ!
今でもハレの人たちの間で、「あの時、待遇をもっと弾んでおけば町の歴史も変わっただろうに」というのがイタいジョークになってるとか(笑)。
そういえば、リューベックにもあったなあ、そんなイタいジョーク。
「ブクステフーデの娘がもっと若くて美人だったら・・・」っていうやつ(笑)。

この、いろんな意味で話題の多い、歴史ある教会のオルガニストを現在勤めるのは、
フランス人のイレネー・ペロー Irenee Peyrot。
ドイツの同じ大学&クラスでずっと一緒に勉強した同僚&親友。
フランス人らしくない(?)根っからのM.レーガー大ファンで、ドイツコテコテロマン派の作品を追求している人。「レーガーの日記」が彼の枕!留学時代、毎日音楽について語ったり、酒の飲み方を教え込まれたりしたものだったなあ。
そんな若かった私たちも、もういい年・・。私がイタリアに嫁いで呑気にパスタを茹でたりなんかしている間に、彼は大出世を果たし、晴れてこの教会の教会音楽家として活躍し始めた。それもそのはず、彼は大の努力家。毎日朝6、7時から練習してます。
私一回もしたことない・・。朝苦手・・。
そんなご縁で呼んでいただいた今回のコンサート、夫を連れて、イタリアの4手4足連弾作品を弾いてきた。普通ドイツ人はこういうレパートリー弾かないので、新鮮だったようで、お年寄りにもウケたみたい(笑)。
オペラ調の曲を一時間ご披露した後、そのままのノリで、なんだか無性~にピザが食べたくなって、ドイツど真ん中の町の、ど真ん中の広場の、ヘンデルの銅像の真下で、
「リアルト橋」(=ヴェネツィアにある橋)という名の、イタリア人が経営する、
ナンチャッテイタリアンレストランで打ち上げ。左がイレネー。
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あーやっぱりドイツはビールだー。ぷはー。
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食べたのは「ピザ・ヘンデル」(一番下)。無理やりにも程があるなあ(笑)。ま、いいのか、誰かが面白がって注文して商売になるなら。私がつい注文しちゃったみたいに。
ピザ・ドン・ジョヴァンニ、ピザ・ロッシーニにも注目。
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しつこい追加になりますが、
この教会にはもう一台、これは1663-1664年のオリジナルの、小さな、しかし素晴らしい楽器がある。少年ヘンデルは、ここでオルガンレッスンを受けたはずだとか。
祭壇正面の上部に備え付けられた小さなこのオルガンは、しかしすごいパワーを持っていて、ストップ一本だけでも十分に教会中に美しい響きが満ちる。ドイツだなあ~。
この近辺にオルガン見学に行かれるオルガン・ファンの方、是非このライヒェル・オルガンGeorg Reichel もお見逃しなく!毎週2-3回、お昼にミニコンサートしています。
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演奏台は壁に挟まれて非常に狭く、夫も精一杯。
鍵盤にお腹が乗りそう。















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by organvita | 2008-07-28 23:41 | 見た弾いたオルガン | Comments(6)

8月のコンサート

8月に弾かせていただくコンサートを、まとめてお知らせいたします。
偶然にもほとんど北イタリア、おらが谷、フィエンメ渓谷でも弾きます。
お近くの方は、夏のドライブがてら、是非遊びにいらしてください!

8月9日(土)21時
ダイアーノ、司教座教会  Daiano, Chiesa Parrocchiale(Val di Fiemme)

「4人のオルガニストによるガラ・コンサート L.Moser, S.Rattini, A.Gai, A.Yoshida」

演奏曲目: 
ドイツ・バロックの名曲を並べて。
J.S.バッハ、N.ブルーンス、W.A.モーツァルト他、 ソロと連弾
Val di Fiemme Eventi Estate


8月10日(日)20時30分
ベルガモ、バジリカ・サンタ・マリア・マッジョーレ Bergamo, Basilica S.Maria Maggiore

「オルガン・ソロ&連弾コンサート」

演奏曲目:
「課題曲」のバッハの変ホ長調BWV552、他にベルガモ出身作曲家やロマン派の作品。
J.S.バッハ、P.ダヴィデ・ダ・ベルガモ、G.メルケル 他
"XV Edizione ''L'Organo della Basilica - Anno 2008''


8月13日(水)21時
テゼロ、司教座教会 Tesero, Chiesa Parrocchiale ( Val di Fiemme)

「ソプラノと二人のオルガニストによるコンサート」
ソプラノ:Kumiko Koike-Clausen(小池 久美子)

演奏曲目: 
ドイツに住む友人ソプラニストをゲストにお迎えして。
ドイツ&イタリアのロマン派の作品を中心に。
V.ベッリーニ、F.シューベルト、F.メンデルスゾーン、W.A.モーツァルト 他
Comune di Tesero


8月14日(木)21時
ボルカ・ディ・カドーレ、 司教座教会 Borca di Cadore, Chiesa Parrocchiale

「オルガン・ソロ&連弾コンサート」

演奏曲目:
イタリアの歴史名器G.カリド Gaetano Callidoを使って。 
N.カーレトン、G.ヴァレリ、C.バーニー、G.M.ルッティーニ 他
Organi storici in Cadore


8月21日(木)21時
プレダッツォ、司教座教会 Predazzo, Chiesa Parrocchiale (Val di Fiemme)

「オルガン・ソロ&連弾コンサート」

演奏曲目: 
今年4月にお披露目した新しい楽器。ドイツ・ロマン派の作品を中心に。
W.A.モーツァルト、L.ボエルマン、F.リスト、G.メルケル 他
Val di Fiemme Eventi Estate


8月29日(金)21時
サッビオーネ(レッジョ・エミリア) サンティ・シジスモンド・エ・ジェネズィオ教会
Sabbione(Reggio Emilia), Chiesa dei Santi Sigismondo e Genesio

「オルガン・ソロコンサート」

演奏曲目: 
18世紀のイタリア歴史楽器を使って。イタリア・初期~後期バロックの作品を中心に。
A.バンキエーリ、B.ストラーチェ、D.ズィポリ、J.S.バッハ、A.ルッケージ 他
Soli Deo Gloria


8月31日(日)21時
ヴィッラノーヴァ(アルベンガ) サン・シュテファノ イン・ピアン・カヴァトーリオ教会
Villanova d'Albenga Chiesa di S.Stefano in Pian Cavatorio

「オルガン・ソロコンサート」
演奏曲目:
18世紀のイタリア歴史楽器を使って。イタリア初期、スペイン、19世紀の作品。マリア様に捧げて。
カバニレス、アラウホ、ズィポリ、J.S.バッハ、モランディ 他。
Amici della Musica Albenga
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by organvita | 2008-07-23 05:36 | 見た弾いたオルガン

師匠と再会&コンサート

恩師の一人、イタリア人のロレンツォ・ギエルミ先生の住む村で、夫と演奏会を弾いた。
実は夫も私も、学校は違えど同門。かの昔、このロレンツォ先生のせい(おかげ?!)で知り合ったのであった。さて、ミラノ郊外にあるこの師匠の村には、イタリアの歴史ある名工、マッショーニ・オルガン工房の、小さいが素晴らしい楽器がある。

今回のコンサートのテーマ(先生からの課題)は、J.S.バッハの「18のコラール」。
これは、バッハのオルガン作品の中でも、宝石のように美しい作品集のひとつで、コラール(ドイツの賛美歌)のメロディに基づいた、約18曲の作品がまとめられたもの。
ちなみに、この曲集を全曲弾くと2時間はかかる。それを一時間のコンサートに収まる長さに選曲して弾いて、との師匠のご指示。それを更に夫と分けたので、ひとり5曲づつになった。ああ良かった、夫が同門で・・と今回初めて本気で思った(笑)。それでも、2-3曲くらいならまとめて取り組んだことはあったが、5曲も、しかもコンサートのためにまとめて取り組むのは、かなりの練習量と集中力だった。いい勉強になりました。(あれ?釣りに行ってなかったっけ??)「バッハ全曲演奏会」などと題して一晩で全部、一人で弾かれる方がいらっしゃるけれど、本当に脱帽です・・!

さて、ここがその教会。
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教会内部。装飾で埋め尽くされた、素敵な教会。
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祭壇に飾られたアジサイ。
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f0161652_23324686.jpgオルガン。
マッショーニ社、
2000年作。

f0161652_2335222.jpg2段鍵盤+ペダル。16ストップ。
このストップは、ほとんどが上下どちらの鍵盤でも使える仕組み。便利。
師匠ロレンツォが注文した楽器だけあって、とても繊細なタッチで弾きやすい。

めでたいTシャツを着て、早速音決め&練習する夫。マツがえないでね。
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今回のコンサートには、実は仕掛けがあった。正面にはスクリーンが立てられた。
まずは、賛美歌に基づくそれぞれ(計10曲)の作品を弾く前に、師匠ロレンツォがその賛美歌の歌詞を朗読、そしてその曲の簡単な聴き所を解説。これならお客さまも聴きやすい。そして、私たちが演奏している間、お客様には美しい映像を見ていただいた。
これがコンサートの様子。(夫の譜めくり時に密かに撮影)
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映像は素晴らしい内容。それぞれの曲に沿った美しい自然、平和、人物などが織りこめられた画像に、たまに聖書のお言葉が混じって出てきたり。お客さまは曲ごとに、色々な瞑想や想いにふけりながら、バッハを聴くことができたようだ。しかもこの映像は、私たちが一曲弾き終わると同時に、タイミングよく完結するようにできていた。
というより、タネを明かすと、実はコンサートのだいぶ前から、一曲それぞれ何分何秒(!)かかって演奏するのか(テンポは弾く人によって様々)、正確に計って教えるように!といわれていたのだった。なので、本番でうっかり緊張してテンポが速くなったとか、ハエが目の前を横切ったので一時停止して捕まえたとか、音がわからなくなったので弾きなおして確認した、っていうことは許されない(当たり前か・・)な状況。

それにしても、バッハってすごい。弾けば弾くほど、聴けば聴くほど大好き。
師匠ロレンツォの前で、卒業以来初めて聴いてもらった機会だったので、少々気合も入って、緊張したけれど、素敵な映像が手伝って、雰囲気のある、自分も弾いてて嬉しいコンサートだった。いつか18曲全部まとめて挑戦したいなあ。なんちゃって、夢ばかりは膨らんでいくのだった。

コンサートには、隣村にあるマッショーニ・オルガン工房の人たちも聴きに来てくださっていた。近くに住むやはり同門の友人たちも。コンサートの後は、マッショーニさんのご自宅の素敵なお庭で、美味しいワインとドルチェを頂きながら、みんなで打ち上げ。
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ちなみに、マッショーニ・オルガンが2004年に、目白の東京カテドラルに、新しいパイプオルガンを設置し、それがNHKハイビジョンで取り上げられたことをご存知の方も多いかと思う。そのDVDが販売されているので、この場を借りて是非ご紹介を。
オルガンが出来るまでの様子、今回私が弾かせていただいたこの村のオルガンや、師匠ロレンツォも出てきます。なにより、オルガンの仕組みがとてもわかりやすく説明されていて、また、ひとつのオルガンが出来上がるまでの多くの人の愛情が伝わってくる、素晴らしいDVD。おススメです。パイプオルガン誕生

また、この東京カテドラルでは毎月、オルガン・メディテーションと題した、この素晴らしいオルガンが聴ける一時を催しておられます。是非一度訪れてみてはいかがですか?!
オルガンメディテーション

コンサートの裏話(?!)は、また明日。

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by organvita | 2008-07-22 00:36 | 見た弾いたオルガン | Comments(2)

アローナのオルガン

週末、ミラノの北にあるマッジョーレ湖(Lago Maggiore)湖畔の町、アローナ(Arona)へ、コンサートを弾きに行ってきた。夫は運転手&譜めくりアシスタント&週末ヴァカンスを兼ねて同行。車で西に5時間ほど。北イタリアの美しい湖が点在する一角にその町はある。
イタリアでも有名なリゾート地でもある湖畔には、素敵なお屋敷やホテルが並び、町行く人たちもお洒落。早速私たちも、ボートにでも乗って湖に繰り出したい&夫は釣りをしたいところだが、ぐっとガマンして、まずは教会へ。
ここは、コンサートを弾かせていただいた、サンタ・マリア教会。
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一日前に到着し、一晩中ゆっくりと音決め&練習をさせてもらうつもりでやってきたのだが、フェスティバルを主催する青年に教会に連れてきてもらい、オルガンを見せてもらって、「さあ、では始めようか!」というところで一言彼が、「いや~さあ~。それが、教会と色々あってさぁうんぬん。・・・ってことで、5時までなら弾いていいよ」と。その時点で時計は4時。今日は一時間しか練習できないってことらしい。早く言ってよ・・。
まあ、明日一日中コンサート前に練習させてもらおう。ちょびっと一時間弾いて、オルガンの雰囲気を知ったところで練習終了。
そんなハプニングは、イタリアに来てすっかり慣れたので(!)、これ好機会!と、その後町をのんびりとお散歩。夏は夜10時近くまで明るい。
マッジョーレ湖畔では若者からお年寄りまで、みんな肌を出して日光浴。
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イタリア白鳥。美しい湖と絵になってますわん。
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ブログに載せるのよ、と言ったらこのポーズ。さすがイタリアのスワンですわん。
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ずっとお天気の優れなかったドロミテからやって来たここは、南国!暑い暑い!久しぶりの太陽、嬉しい!湖畔のジェラートやさんでアイスを買った。すんごく美味しかった!
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お魚が目に見えるところで気持ちよさそうに泳いでいる。手でも届きそう。
夫落ち着きなし。しかし釣竿は持ってこなかった。旅行中ずーっと残念がっていた。
悔し紛れに、見つけた釣具屋さんで釣り針買ってた。どこで買っても同じだろうに。
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その釣り具やさんもあったショッピング街。センスのある素敵なお店が並んでいた。
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夜は湖畔の素敵なレストランで、フェスティバルを主催する青年&彼女&私たちで、
美味しくお魚をいただいた。日本のアニメの話題で盛り上がる。
明日本番があるのにまだ音も決まっていないことも、すっかり忘れてる私。
酔って気持ちいいところに青年一言、「明日は11時から弾いていいよ」。了解。
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翌日11時に教会へ。するとお葬式が始まるところだった。一時間待ってから練習開始。
教会内部。
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                オルガンは後部バルコニーに。
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イタリアの名工房のひとつ、ロルト&ランズィーニ(Dell'Orto&Lanzini)の、第一作目。
1984年制作。
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        ドイツ・バロック様式。3段鍵盤+ペダル。39ストップ。
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このオルガンの音色は弦楽器風。どのストップの組み合わせも、弦楽器アンサンブルのように自然に溶け合ってくれた。「~様式」なんていうスタイルや時代設定で、オルガンの楽器制作がされ始めた頃の、しかも特にイタリアでは先駆けの楽器の一つなのだろうと思うが、第一作目の楽器がすでにこのレベルとは、さすが名工。ちなみにアローナ近郊にこの工房はある。残念ながら時間がなくて、今回は工房見学できなかった。
鍵盤が不均等で少し弾きにくかったところもあるが、このタイプの、彼らの新しい楽器をいつか是非見せていただきたいな。

f0161652_1363970.jpgコンサート前に教会前に掲げられたポスター。























今回のコンサートでは、バッハの、イタリアから影響を受けて書かれたオルガン曲を中心にプログラムを組んでみた。
コンサート後の自分の感想:バッハやっぱり難しい・・・でも噛めば噛むほど面白い!
上手くいったところ、反省点も含めて、また自分への新しい課題もできた演奏会だった。

さて、とても嬉しいお客様が!
アローナに住んでいらっしゃるという日本人の方が、ミラノに住まれている日本人のご友人ご夫妻&その3歳のお子さまを連れて、コンサートを聴きに来てくださっていたのだ!
コンサート後、オルガン・バルコニーにわざわざ上がってきてくださった。ポスターに日本人の名前を見つけたから、と。
こうやって異国の地で日本人の方とお会いして、お声をかけていただけると、本当に嬉しいのです。ちなみに、3歳の黒髪&くりくり黒色おめめの日本人女の子は、すっかりフェスティバル関係者のとりこ。遅い時間までがんばって聴いてくれてありがとね。
その後、このKさんもお誘いし、フェスティバル関係者と打ち上げ。
海外で色々な形でがんばって生活されている日本人の方を見たりお話したりすると、私も自分の励みになって、またがんばろうと元気が湧いてくる。
Kさん&オルガン仲間たちと楽しく、久しぶりの日本語でお話しながら、楽しい夜が更けていった。Kさん、またお目にかかれるのを楽しみにしています!
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次の日は、マッジョーレ湖観光。続きはまた明日。


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by organvita | 2008-06-24 02:26 | 見た弾いたオルガン | Comments(2)

ボルツァーノで練習

毎日遊びほうけ&食べほうけのようにみえるけれど、その合間を縫って(ってことは、あくまでも優先権は遊び&食いなのだが)、一応毎日オルガンのれんしゅうしてます・・。
今週末にコンサートを弾くので、ちょっと気合の入るこの頃なのだが、天気はずーーっと悪いし、暗くて寒い教会に篭りっきりだし、だんだんモンモンとしてきたので、昨日は気分転換兼ねて、ボルツァーノの教会に練習に行ってきた。

Bolzano ai Pianiという地区の、住宅街の中に建つ、モダンな教会。幼稚園も併設。
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このオルガンはAndrea Zeni 2006年作。
実は数年前、社長アンドレア&夫と共に、北ドイツのシュニットガーなどの歴史楽器の見学に行き、そこからインスピレーションを受けて作られた楽器なので、私もなんだか親しみがある楽器。Sesquialteraやフルート管なんか、まさに北ドイツ・バロックのそれと同じ響きで美しく懐かしい。
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そもそもこの教会にはオルガン・バルコニーがなかったのだが、この新しいオルガンを入れるにあたり、オルガンよりも高い額だして、バルコニーを作ったとか。
その甲斐あって、バルコニーはとっても広く、30名程度の聖歌隊が余裕で座れるスペースあり。オルガン弾いてても、周りが広いのでゆったりした気分。
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            演奏台。2段鍵盤&ペダル、19ストップ。
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            ストップ名の札は、社長奥さんの手書き。
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たまにこうやって練習楽器を換えると、気分転換にもなるし、なによりオルガンって、一台一台個性が色々なので、新しい音色と出会って、新しいアイディアが湧いてきたり、鍵盤のタッチが変わって、弾けてる筈だった所がウソだったことに気づかされたり(汗)。
朝から来て、家から持ってきたビスケットかじりながら、調子に乗って(必死に?!)練習してたら、2時過ぎに神父さまが顔を出して「あんた、まだ練習してたのかい?お昼食べたのかい?おやまあ、じゃあ、ゴハン余ってるから食べてきなさい」と。
練習させてもらった上に、お昼もご馳走になった。ちなみに、ここはカトリックの教会なので、神父さんは独身。60代、80代の二人の神父さんが生活しているのだが、身の回りのお世話は、ウクライナ出身の出稼ぎ女性がしている。

神父さんとおしゃべりしながらお腹いっぱいになったところで、お礼を言って、
ボルツァーノの町でお買い物。ここはヴァルター広場。(Piazza Walter/Walterplatz)
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ボルツァーノはカラフルでとても可愛い町。イタリアとオーストリアが入り交ざっている。
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ここはポルティチ(portici)と呼ばれるアーケードが続くメインショッピング通り。
お洒落な店が並んでいるので、さっきの必死の練習以上に、目を皿のようにして必死にウインドーショッピング。ああ、たまには町に出て自分を磨かなきゃ・・。私、田舎の牛臭いかも?と急に不安になって自分の袖の匂いを嗅いでみたりして。まだ大丈夫みたい。ほっ。
アーケードには、たまに美しいフレスコ画が残っていたりする。
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毎日お花やさんと八百屋さんの市場が並ぶ通り。一通り見て回って、他の店と見比べてから、一番お手頃で新鮮な野菜をゲット。
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f0161652_23394228.jpgこの日から夫たちは、新しいオルガンをボルツァーノ郊外の教会に搬入&組み立てしているので、帰り際に偵察。Cornedoという村の教会。
ボルツァーノ市内を取り囲むブドウ畑を、ぐーっと登っていく。















教会前のブドウ畑から見下ろしたボルツァーノ市。
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こちらはくるみの木。
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教会の中に入ると、おっ、いたいた!夫(左)、社長アンドレア(右)。
最近食べすぎが続いてちょっと心配していたけど、夫よ、まだその狭いスペースに入れる余裕があってよかったね。お二人、ただいま鍵盤のメカニック調整中。
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上にはアンドレアの弟、ワルター。前回の魚釣りデビュー後、釣竿買った。
指圧もする彼、ここに来てまでやってるのかと思いきや、オルガンの風箱調整中。
その姿勢、間違えちゃうよ。この後ここにパイプをずらっと並べていきます。
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低い天井に、一センチの余裕もないくらい、ぴったり納まってたオルガンケース。オルガンを持った聖人か天使が書かれたフレスコ画が、オルガンの上で見守ってる。
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工具やパイプなどが所狭しと並ぶ中、ん?水笛か?・・・と思ったらビールだった。
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教会内部。小ぶりでステキな教会。
早く完成させてね。今度はここに練習に来ようかな。ぶどうとくるみの収穫の頃に?!
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by organvita | 2008-06-19 00:30 | 見た弾いたオルガン | Comments(3)

ミシェル・ブヴァール氏の演奏会を聴く

フランスを代表する世界的オルガニストの一人、ミシェル・ブヴァール氏が、トレントの教会音楽フェスティバルの一環でリサイタルにいらしたので、聴きにいってきた。

場所はトレントのクリスト・レ教会(Chiesa Parrocchiale di Christo Re)。
この教会には、夫の勤める工房が事実上第一作目として1994年に制作した、
ドイツ・バロック様式のオルガンがある。2段鍵盤+ペダル、19ストップ。
さっぱり白い壁のモダンな教会。祭壇の周りをめぐらす高いアーチのデザインに、
オルガンが上手くマッチしている。
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演奏台。鍵盤は指に吸い付くように気持ちいい。
演奏会直前、リード管の調律をしている社長と手伝い夫の横で、無邪気に写真撮影中。
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演奏会のプログラムは、まずバッハのプレリュード&フーガ ニ長調 BWV532 で華々しく幕開け。そしてメンデルスゾーンのピアノ変奏曲のオルガン編曲版(とてもヴィルトゥオーゾ!)、その後フランス古典作品が続き、最後にブヴァール氏のお祖父様の作品が披露された。一時間の演奏会があっという間に感じられたほど、本当に素晴らしい演奏を聴かせていただき、大感動~!「ドイツ・バロック様式のオルガン」と、ある意味限定された楽器なのに、フランスものも、メンデルスゾーンも、それぞれのレパートリーが本当に活きた音作りで、ただただ感服。工房社長も、オルガンの魅力を十二分に引き出してもらってとても嬉しそう。夫、半分シゴトだったのもすっかり忘れて、ハート型の目で「サインください」。

ブヴァール氏は教育者としても素晴らしく、彼のもとで学び、その後第一線で活躍されている日本人オルガニストの方も多くいらっしゃる。日本へもよく来日されているから、その演奏を聴かれた事のあるファンも多いだろう。

実は彼、今年9月に再来日のご予定だ。しかも折りしも私の第3の故郷、岩手県の盛岡市民文化ホールでリサイタルをされるという。当ホールには、フランスの名工ガルニエ・オルガン工房が造った素晴らしいバロック様式の楽器があり、ヨーロッパや日本のオルガニストたちからも絶賛されている。
「ウワサは聞いてるよ!」とブヴァール氏もとても楽しみにしている様子だった。
ああ、私も飛んで帰りたい~!

またとないこの機会、是非みなさま足を伸ばしてみてください。
詳細はこちらからどうぞ。チケット発売間近です。
【財団法人盛岡市文化振興事業団】


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by organvita | 2008-05-28 18:31 | 見た弾いたオルガン | Comments(4)

ジェノヴァ サン・アンナ教会のオルガン

山を降りて高速道路で西に約5-6時間、イタリア最大の港湾都市ジェノヴァへ、夫とともに演奏の仕事に行ってきた。
招待してくださった「ヨーロッパ・オルガンフェスティバル2008」は、今年で30年目を迎え、ジェノヴァの教会やホールにあるオルガンを使ったコンサートを企画している。
今回私たちが弾かせていただいたのは、カルメル会修道院内にあるサン・アンナ教会。
オルガンはN.アガティ(Nicomede Agati)という、トスカーナ州ピストイア出身のオルガンビルダーが、1852年に製作した楽器。
山を降りて、久しぶりに訪れた大都会。その喧騒とする街を見下ろす小高い山の上に立つこの修道院の教会には、外の世界と打って変わって、平和と安らぎに満ちた、なんともいえない暖かい雰囲気で満ちていた。

教会内部。祭壇の向こう側には、修道士専用の会堂が続いている。
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祭壇と反対側、入り口上部のバルコニーにあるオルガン。
早速、このオルガンの音色や鍵盤の感触を試していく。
夫、演奏台で試奏中。私、下からバランスチェック中&写真撮影も忘れずに。
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カルメル会の聖人の像が会堂を取り囲み、その下には告悔室が。
告悔が始まると、次の人がうっかり入って来ないように、上に「使用中」の赤いランプが点る様になっていた。意外とモダン。
イタリアらしい透明な色彩で描かれた、クーポラの天使たち。
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演奏会の前に結婚式があり、私たちの練習中にお花屋さんが美しく祭壇を飾っていった。
季節に合わせた白いアジサイと赤いバラの取り合わせがきれい。
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さて、バルコニーに上がってみると、天から降ってくる光線のような細いパイプが並んでいた。

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典型的なイタリアの歴史楽器の演奏台。譜面台の彫刻が美しい。(楽譜に文字を書くとき、ちょっと書きにくかったけど・・・)

修復はA.コルノ兄弟(A.Corno&figli)、1992年。

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指に吸い付くような気持ちいいタッチの鍵盤。
イタリアのオルガンにしては、少し重め。
足のペダルの上にはペダレットと呼ばれる「オプション」機能を操作できるレバーが並ぶ。














音色を操作するストップ。25種類。右列の上側、掃除機の柄のようなものが右側からニョっと押し出しているのがわかるだろうか。これはペダルの足元にあるレバーの「Tira tutti(=全部引っ張る、の意)」を踏み込むと、テコの原理に従って出てくる。
この足元レバーひとつ踏み込むことで、ここに並ぶこのオルガンのメインのストップが一気に仕込める仕組みで、ストップを一つ一つ手で操作する手間を省ける。楽譜上で、ここからパッと大音量で!なんてやりたいときに大変便利。
それにしても、なんて単純なアイディア!イタリアのオルガンには大抵ついているけれど、イタリア人らしい楽観的な発明だな、と微笑ましく思うのは、私だけではないと思う。
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恒例(?!)おもしろストップ名。(写真ぶれちゃってごめんなさい)
「Cornetto chinese」=中国人のコルネット(←管楽器)。
16フィートベースの5度管だった。ドの鍵盤を弾くと5度上のソが鳴る。他のストップと組み合わせると、倍音豊かな不思議な音色の効果が。キョンシーのテーマ曲(古い・・)とかに似合いそう。でも修道院で弾くには勇気がいるな。
「中国」がストップ名に出てくるのを見たのは初めて。giapponese(日本人)だとどんな音になったんだろう?!
その下は、Voce angelica=天使の声。柔らかいビブラート効果の出るストップ。
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演奏会10分前、バルコニーからの様子。(写真なんか撮ってないで集中して欲しい・・叱)
演奏会は夜9時から。イタリアのコンサートは始まりが遅い。お客さんは夕食を家で済ませてから出かけてくるのだ。オルガンはお客さんの背中側になるので、演奏している姿を見たい人は、その辺から椅子を勝手に探してきて、こっち向きに座っている。
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私たちが演奏したのは、イタリアの連弾曲2つ、そしてイタリアのソロ作品をそれぞれ弾いた。オペラ作曲家ベッリーニのオルガン作品、ヴァレリ、モランディなど。
一般的なイタリアオルガンに対して、ここのオルガンは一つ一つの音がはっきりと大きく、太いなあ、というのが私の印象。それもそのはず、このビルダー、N.アガティは、当時イタリアでもいち早く、他のヨーロッパの国の新しいオルガン製作技術を、自身の楽器制作にも積極的に取り込んでいった人物らしく、風圧も高い。男性的なスカッと気持ちのよい響きを楽しませてもらった。ホント、いい楽器って何時間弾いてても疲れない。

それにしても、私はドイツに留学したくらいだから、レーガーとかブクステフーデとかバッハとか、ドイツもの漬けの学生生活を送っていたのだが、こういうイタリアン・レパートリーを、しかも自分のコンサートプログラムにモリモリ組み込まざるを得なくなるとは全く想像していなかったけど、所変わればオルガンも変わる、で、今となっては、こういう底抜けに陽気なイタリア作品も楽しんで弾けるようになってきた。楽譜と一対一で何時間にらめっこしてもわからないことも、日常の何気ない生活の中に、ヒントが隠れていることも多い。

さて、「演奏は演奏後のビールを飲むためにある」と言われるように(誰が言ってるのか知らないけど)、私たちも演奏会後、地元のトラットリアに連れて行ってもらい、乾杯!
ジェノヴァといえば魚。早速メカジキのステーキを注文。メカジキの上に、オリーブ、松の実、バジリコソース(←ペスト・ジェノヴェーゼはここの名物)がかかったもの。絶品!
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付け足し。このカルメル会修道院には、修道士が17名いるとか。知り合った修道士さんたちは意外と若い年代も多く(20代の若者も多かった)、とても気持ちのよい明るい人たち。数週間、数ヶ月での修道院体験もできるそう。
修道院の中庭を案内してくれた。
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修道院内には1750年(バッハの没年!)から続く薬局があり、修道士さんが自然薬品を調薬、販売している。記念にバラのエキスのシロップをいただいた。
体の中がきれいになりそう~。
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by organvita | 2008-05-19 19:04 | 見た弾いたオルガン | Comments(2)

オルガンのれんしゅう

今週になって急に温かくなり、タンポポが満開!
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タンポポ、山桜、雪山の三重唱。
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以前から気になっていた、なんとなく独特の雰囲気が宿る、あこがれのお家。
どんな人が住んでいるんだろう。こんなところに住めたらいいなーーー・・・。
どこまでも庭が続いているかのよう。
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f0161652_716476.jpg・・・なんて、いつも夢みながら通り過ぎていたこのお家。
・・が!なんと!
今日見たら売りに出ているではないかっっ!!
売りにでなきゃ買えない!
ってことは、今まさに買い時?!



・・・と数分夢見て写真にまで収めちゃったものの、ああ、はかない。

夢は夢、現実は現実。
こんなに暖かくていい気持ちなのに、
このタンポポの上でごろっとしたら最高だろうなーと思うのに、
先のことを考えるとどうしても怖くて、れんしゅうにいかなければならず。ああ、はがゆい。

ということで、やってきたのが、いつも練習に使わせてもらっている小さな教会。
おらが村から車でちょっと。同じ谷の村にある。教会の前はちょっとした公園になっていて、村人の憩いの場、午後はこどもが集まってくる。
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教会の中に入るとひんやり。夏でもセーター持参で練習している。
幸い田舎の教会なので、他に練習に来る人もほとんどいず、ミサの時を覗けばいつでも快く貸してくれるので、とてもありがたい。しかも無料です。
こういうところ、ヨーロッパって寛大でいいなと思う。
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なので、せめてお礼に、練習に来たらこのマリアさまの足元のろうそくに火をつけている。
ろうそくひとつ10セント。16円・・。今日はブログ用にふたつサービス。でも小銭忘れた。ああ、ごめんなさい。
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     このオルガンは夫が勤めるオルガン工房が2000年に制作したもの。
            2段鍵盤+ペダル、14ストップ&カプラー。
    小ぶりだが、この規模の教会に丁度よい大きさ。残響の気持ちよい教会。
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           木の模様のデザインは、いつも社長の奥さまが。
            それをこの谷の木彫り職人が掘り出していく。
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鍵盤はとても繊細。一人で練習していても、実はこの楽器が、良い弾き方しているか、
そうでないか、色々と教えてくれるのだ。先生、今日もキビシく容赦なし・・・。
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                これからもお世話になります。


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by organvita | 2008-05-09 08:25 | 見た弾いたオルガン | Comments(10)

ドロミテ横断のシゴトその3  コルティーナのオルガン

コンサート当日、なんとなく落ち着かなくて午前中に教会を覗きにいくと、外にすごい人だかり。ブラスバンドの響きが石造りの町中にこだましている。お祭りだ!
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中に割り入ってみると、山の民族衣装を着たブラスバンドが賑やかに演奏中。そして白い天使たち!周りを取り囲む人たちも何気におしゃれに着飾っている。そう、今日はこの町のプリマ・コムニオーネ(Prima Comunione)の日。カトリックのお祝いで、7~8才の子どもが初めてミサで聖餐式に与るのだ。この後みんな教会内に移動しミサに参列する。子どもの成長を親戚揃って神の前で祝うということだから、日本で言えば七五三みたいなもの。宗教が変わっても、人間が根本的に持つ気持ちや祈りは全世界共通だ。
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f0161652_18334171.jpg美しい民族衣装に身をまとって演奏する町の楽団員たち。アニメソングもあり。

f0161652_18343492.jpg全然聴かずにおしゃべりに夢中な天使たち。
どの国の天使も同じか・・。

親たちも我が天使の写真撮影に余念がない。
どの国の親も同じか・・・。
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美しかったので、写真を撮らせていただいた。はにかんだ娘さんかわいい。「コピー商品は作らないでね」と辛口のママ。私は中国人ではありません。
ミサが終わるのを待っている間に昼食を済まし、教会へ。サン・フィリップ&ジャコモ教会。
やっと私たちの練習時間。教会内はピンクで統一された美しいバロックスタイル。
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恒例、オルガニストの階段。洞窟みたい。オルガンへの道のりは細く、暗い・・・?
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上に上るとかなり広いバルコニーが。その真ん中に演奏台。この楽器はかなり大型。
54ストップ、3段鍵盤&ペダル。パイプ総数約3000本。南チロルの工房マウラヒャー社(Mauracher)1954年制作。A.ゼーニ(Andrea Zeni)2002年修復。
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演奏台から見た教会内部はこんな感じ。背中側にパイプケースが鎮座。前回のオルガンと見比べていただくだけでもわかるかと思うが、本当に一台一台の仕組みや音色が違うので、夜の演奏会に向けて、早速このオルガンの持っている「素材」を試しながら、演奏する曲の音作りをしていく。このシンフォニックなオルガンのために私たちが用意した曲は、ドイツとイタリアのロマン派の作品、そしてA.へッセのオルガン連弾作品。
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ブログを始めてからいつもに増して写真を取る回数が増えてる私をみて半ば呆れている夫が、「これブログに載せたら?」と私を呼んだ。なんと、このオルガンにはイキな名前のストップが!私「はい、写真撮るからどいて~」。全く練習になってない。
ストップ番号(上の数字)4番:Flauto del bosco(森のフルート)
               23番:Flauto delle Dolomiti(ドロミテのフルート)
どちらも素朴で柔らかい響きがした。
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演奏台左側には電話つきテレビ?練習に疲れたらこの電話で出前とか頼むと(できればピザより盛りそばがいいな)ここまで持ってきてくれて、テレビで連ドラ見ながら、CMの間にまたちょこっと練習でもしとくか、なんてことは残念ながらありえない。ほんと残念。
このテレビには、ミサ時の遠い祭壇での様子が映し出され、オルガニストはこれで弾くタイミングをチェックしながら演奏しているのだ。オーケストラとの演奏のときに指揮者を映すこともある。電話は祭壇脇の部屋と繋がった内線電話で、教会が広くて一々往復できないので、この電話でミサの諸事項を神父と連絡し合う。今日の賛美歌の番号は?とか。
右側にある黒い計算機のようなものは、ここに賛美歌番号を入力して送信すると、教会内の電光掲示板に映し出される仕組み。この操作を間違えると誰も歌ってくれない・・・。
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バルコニーで聴こえる音やバランスと、教会やホール内で聴こえるそれとは、全く違うことが多い。オルガンは建物あっての楽器で、その残響もすべて含めて音作り&音楽作りをしていく。バルコニーで気持ちよく弾いてても下では大変なことになっていた?!なんてこともあり得るから、今回も夫と私はあの細い階段を十何往復もしながら、一人が上で弾き、もう一人が下から「バランス悪い」とか「もっと高音部増やせない?」とか「そのメロディの音イマイチ。他のストップないの?」とか「もっとはっきり弾かないと残響でなんだかわからん」とかなんとか言い合う。今回は相手が身内だから、言い過ぎたりして険悪なモードになりかけたりした(?!)が、その曲の背景、オルガニストの趣味や癖を察知して相応しい助言をすることは、音作りの際のアシスタントの役割として大変重要。なので大抵、アシスタントはやはり同じオルガニストか、オルガンのことをよくわかっている人に頼むことになる。譜めくりだって、それだけではなく、微妙なタイミングでストップを追加してもらったり減らしてもらったり、沢山の鍵盤とペダルの演奏で対応しきれないオルガニストの片腕となって働いてもらうのだ。
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そんなことをやっているとあっという間に4時間経過。ぶっ続け。小さい脳みそが「もう限界」と指令してくる。でも音作りをなんでもかんでも終わらせないとコンサート弾けない。「時間足りませんでした」とは言えない。そんなんで、どうにかすべての音色の組み合わせを決めると、それを今度はコンピューターに一々記憶させていき(コンピューターがすべてのオルガンについている訳ではないので、その場合はもっと複雑)、それを自分の楽譜にも「この小節からこの番号の音色」という風にメモっていく。私は「Post It」派だが、オルガニストによってメモの仕方は三者三様。弾く鍵盤の場所も同時に記す。そしてここから初めて文字通りの「練習」開始。まだ数時間しか知り合っていないこの楽器の魅力を最大限に引き出せるよう、少しでも慣れるように弾き込んでいく。

いつも当たり前のこととしてやっているが、改めてこうやって書き出していくと、オルガニストって本当にすごい地味な作業をコツコツやってたんですね~。
世界中のオルガニストに乾杯!!
あ、乾杯はコンサートのあとで。
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そしてやっとコンサート。私たちの他に、この地域を拠点として活躍するアカペラ合唱団と金管アンサンブルの演奏もあった。無名のグループだがかなり上手。残念ながら雨が降り始めた夜9時からのコンサートにはお客さんまばら。それでもヴァリエーションに富んだ素敵なコンサートだった。私たちも久しぶりにシンフォニックな大型の楽器を気持ちよく弾けて大満足!
その後簡単なパーティーが用意されており、夫は早速気持ちよくワイン飲んでる。私が帰り運転するってことらしい。コルティーナ出発夜11時、恒例イタリアの道表示の悪さに町中を3周迂回させられ(!!)一時間経過。やっと町から脱出、雨と霧で見通しの悪い山道をゆっくりゆっくりと車を走らせる。対向車なし。夫は気持ちよく横で獏睡中。その間、野生のシカ2匹と野うさぎに遭遇。

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by organvita | 2008-05-06 19:00 | 見た弾いたオルガン | Comments(4)

ドロミテ横断のシゴトその2  サン・ヴィートのオルガン

コンサートのある教会では当日午後しか練習時間がもらえないということで、一日前のこの日、以前から行ってみたかった近郊のオルガンを見学に行った。場所はサン・ヴィート・ディ・カドーレ(S.Vito di Cadore)。コルティーナ・ダンペッゾ(Cornita d'Ampezzo)から南に車で15分程。山に囲まれた風光明媚な村。早速お目当ての教会へ。
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写真ではあまり出ていないが、水色とベージュでまとめられた落ち着きある内部。高窓から差し込む光の元では、入れ替わり立ち代りやってくる村人が絶えず祈りを捧げていた。
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そして、祭壇の反対側、教会の後部バルコニーの上には、エレガントなイタリア様式の箱に納められた1800年代のオルガンが、私たちを静かに待っていてくれた。
オルガン:G.バッツァーニ&息子、1848制作(Giacomo Bazzani e Figli)
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早速バルコニーに上がってみることに。ちなみに、ヨーロッパの教会のオルガンは、このようにバルコニーにドンと鎮座していることが多いが、そこへ登っていくオルガニストのための階段は狭い。得てして大食い・大酒飲みのオルガニストの私たちは要注意(もちろん上品な方もいらっしゃいます、念のため)。演奏前に食べ過ぎて太っちゃったオルガニスト(そんなことありえないか・・)、演奏前に飲みすぎてすでにフラついちゃってるオルガニスト(これはありえる・・・)にとって、この階段はかなりキビシイのだ。(ほんとかなー?)
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階段の途中にはこのように扉がついていて、誰でも登ってこれないように管理していることも。大切な楽器、芸術品ですから。今回は神父さんに頼んで鍵を開けていただいた。
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無事に(?)バルコニーに上ると、そこには下から見上げるよりはるかに大きなオルガンと(カメラに収め切れません)その演奏台が。これは典型的な18~19世紀のイタリア・オルガンの演奏台。こういうものはこういうところに来なければお目にかかれないので貴重な体験。どういう仕組みになっているのか、どうやって演奏するのか、まずは早速鍵盤とその付近を音を出しながら色々探ってみる。
パイプオルガンは一台一台がすべて一点ものの手作り。「世界規格」「大量生産」なんて基本的にはないのだ。ましてこのような歴史楽器となると、お国柄や地方色がその楽器制作技法や音色に顕著に表れる。その楽器が置かれるところが望むものを、その土地の職人が作り上げていったからで、まさにオルガンって文化だなと感じる。ある意味、民族楽器であるとも言えるのでは?そして、その楽器のための作品がそこから生まれていくのだ。
楽器あっての作品、作品あっての楽器。
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この先、ちょっとオタクな内容になります・・・。
イタリアのオルガンは鍵盤数が少なく、1~2段が普通。このオルガンも一段だけなので、大型オルガンを見慣れた現代の私たちには物足りないように感じるかもしれないが、実はこの種の鍵盤は、高音部と低音部で音色を分けることができる。そのため鍵盤右側に並ぶストップも(=音栓。イタリアのは引っ張るタイプではなく、これを左右に移動させて操作する)、例えば、Principale soprani(プリンシパル高音部)、Principale bassi(プリンシパル低音部)という風に、ひとつの音色に対して二つのストップを持っている。「普通」なら、例えばメロディーと伴奏を違う音色で弾き分けたいときには、右手と左手をそれぞれ、違う音色を仕込んだ鍵盤で演奏するが(=2段の鍵盤が必要)、このタイプの楽器ではそれが一段だけで出来ちゃう、ということ。
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長くなるので、割愛しながら他の「オプション」を説明すると、鍵盤すぐ上にカンパネッラ(Campanella)のストップ。足鍵盤高音部のこの「Mi」の音は鳴りません。これはテルツァ・マーノ(=「3つ目の手」という意。手鍵盤ソプラノ部分を一オクターブ高音同時に鳴らせるようになる)のスイッチとして機能。「Fa」はロッランテ(=高さを認識できないくらい低いパイプが数本一度に鳴る。大太鼓をずっと鳴らしている感じ)。「Fa」の上の棒はグランカッサ(Grancassa)、その右のはティラトゥッティ(Tiratutti。=これを踏み込むと全てのストップが一度に引き出せる)、そして一番右のがロンバルディア式自由コンビネーション(combinazione libera “alla lombarda”=予めストップを仕込んでおいた後でこのノブを踏み込むと、 そのストップがまとめて引き出せる)。

f0161652_981953.jpg譜面台の上に陳列するカンパネッラたち。打楽器のチェレスタをここにはめ込んでいる。鍵盤弾くとチンチンと頭上で鳴ってかわいい。これと同じものが横浜のみなとみらいホールのオルガンにも付けられているので、一度聴かれてみては?

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グランカッサ(Grancassa)の正体。足元のグランカッサのノブを思いっきり踏み込むと(かなり力が必要)、オルガンの中に隠れている太鼓&シンバル&シストラムの打楽器がいっぺんにガシャジャジャーン~!と鳴る。そりゃ賑やか。












なぜこのオルガンの見学に来たかって?それはもちろん、これらの「オプション」で遊んでみたかったから!「ふざけた楽器」なんて言わないでください。これぞイタリア文化なのです(笑)。イタリアはオペラの国。オペラのオーケストラをオルガンにも求めた結果。
オペラチックなイタリア・オルガン作品を持参して、「オプション」を即興で付け足しながら、賑やかで楽しい一時を過ごした。下で静かに祈っている村人には申し訳ないけど、どうやら彼らも慣れている様子。見た目はエレガントな雰囲気のこのオルガンの、素顔を見た気がした。


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by organvita | 2008-05-06 09:52 | 見た弾いたオルガン | Comments(3)