ジェノヴァ サン・アンナ教会のオルガン

山を降りて高速道路で西に約5-6時間、イタリア最大の港湾都市ジェノヴァへ、夫とともに演奏の仕事に行ってきた。
招待してくださった「ヨーロッパ・オルガンフェスティバル2008」は、今年で30年目を迎え、ジェノヴァの教会やホールにあるオルガンを使ったコンサートを企画している。
今回私たちが弾かせていただいたのは、カルメル会修道院内にあるサン・アンナ教会。
オルガンはN.アガティ(Nicomede Agati)という、トスカーナ州ピストイア出身のオルガンビルダーが、1852年に製作した楽器。
山を降りて、久しぶりに訪れた大都会。その喧騒とする街を見下ろす小高い山の上に立つこの修道院の教会には、外の世界と打って変わって、平和と安らぎに満ちた、なんともいえない暖かい雰囲気で満ちていた。

教会内部。祭壇の向こう側には、修道士専用の会堂が続いている。
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祭壇と反対側、入り口上部のバルコニーにあるオルガン。
早速、このオルガンの音色や鍵盤の感触を試していく。
夫、演奏台で試奏中。私、下からバランスチェック中&写真撮影も忘れずに。
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カルメル会の聖人の像が会堂を取り囲み、その下には告悔室が。
告悔が始まると、次の人がうっかり入って来ないように、上に「使用中」の赤いランプが点る様になっていた。意外とモダン。
イタリアらしい透明な色彩で描かれた、クーポラの天使たち。
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演奏会の前に結婚式があり、私たちの練習中にお花屋さんが美しく祭壇を飾っていった。
季節に合わせた白いアジサイと赤いバラの取り合わせがきれい。
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さて、バルコニーに上がってみると、天から降ってくる光線のような細いパイプが並んでいた。

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典型的なイタリアの歴史楽器の演奏台。譜面台の彫刻が美しい。(楽譜に文字を書くとき、ちょっと書きにくかったけど・・・)

修復はA.コルノ兄弟(A.Corno&figli)、1992年。

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指に吸い付くような気持ちいいタッチの鍵盤。
イタリアのオルガンにしては、少し重め。
足のペダルの上にはペダレットと呼ばれる「オプション」機能を操作できるレバーが並ぶ。














音色を操作するストップ。25種類。右列の上側、掃除機の柄のようなものが右側からニョっと押し出しているのがわかるだろうか。これはペダルの足元にあるレバーの「Tira tutti(=全部引っ張る、の意)」を踏み込むと、テコの原理に従って出てくる。
この足元レバーひとつ踏み込むことで、ここに並ぶこのオルガンのメインのストップが一気に仕込める仕組みで、ストップを一つ一つ手で操作する手間を省ける。楽譜上で、ここからパッと大音量で!なんてやりたいときに大変便利。
それにしても、なんて単純なアイディア!イタリアのオルガンには大抵ついているけれど、イタリア人らしい楽観的な発明だな、と微笑ましく思うのは、私だけではないと思う。
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恒例(?!)おもしろストップ名。(写真ぶれちゃってごめんなさい)
「Cornetto chinese」=中国人のコルネット(←管楽器)。
16フィートベースの5度管だった。ドの鍵盤を弾くと5度上のソが鳴る。他のストップと組み合わせると、倍音豊かな不思議な音色の効果が。キョンシーのテーマ曲(古い・・)とかに似合いそう。でも修道院で弾くには勇気がいるな。
「中国」がストップ名に出てくるのを見たのは初めて。giapponese(日本人)だとどんな音になったんだろう?!
その下は、Voce angelica=天使の声。柔らかいビブラート効果の出るストップ。
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演奏会10分前、バルコニーからの様子。(写真なんか撮ってないで集中して欲しい・・叱)
演奏会は夜9時から。イタリアのコンサートは始まりが遅い。お客さんは夕食を家で済ませてから出かけてくるのだ。オルガンはお客さんの背中側になるので、演奏している姿を見たい人は、その辺から椅子を勝手に探してきて、こっち向きに座っている。
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私たちが演奏したのは、イタリアの連弾曲2つ、そしてイタリアのソロ作品をそれぞれ弾いた。オペラ作曲家ベッリーニのオルガン作品、ヴァレリ、モランディなど。
一般的なイタリアオルガンに対して、ここのオルガンは一つ一つの音がはっきりと大きく、太いなあ、というのが私の印象。それもそのはず、このビルダー、N.アガティは、当時イタリアでもいち早く、他のヨーロッパの国の新しいオルガン製作技術を、自身の楽器制作にも積極的に取り込んでいった人物らしく、風圧も高い。男性的なスカッと気持ちのよい響きを楽しませてもらった。ホント、いい楽器って何時間弾いてても疲れない。

それにしても、私はドイツに留学したくらいだから、レーガーとかブクステフーデとかバッハとか、ドイツもの漬けの学生生活を送っていたのだが、こういうイタリアン・レパートリーを、しかも自分のコンサートプログラムにモリモリ組み込まざるを得なくなるとは全く想像していなかったけど、所変わればオルガンも変わる、で、今となっては、こういう底抜けに陽気なイタリア作品も楽しんで弾けるようになってきた。楽譜と一対一で何時間にらめっこしてもわからないことも、日常の何気ない生活の中に、ヒントが隠れていることも多い。

さて、「演奏は演奏後のビールを飲むためにある」と言われるように(誰が言ってるのか知らないけど)、私たちも演奏会後、地元のトラットリアに連れて行ってもらい、乾杯!
ジェノヴァといえば魚。早速メカジキのステーキを注文。メカジキの上に、オリーブ、松の実、バジリコソース(←ペスト・ジェノヴェーゼはここの名物)がかかったもの。絶品!
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付け足し。このカルメル会修道院には、修道士が17名いるとか。知り合った修道士さんたちは意外と若い年代も多く(20代の若者も多かった)、とても気持ちのよい明るい人たち。数週間、数ヶ月での修道院体験もできるそう。
修道院の中庭を案内してくれた。
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修道院内には1750年(バッハの没年!)から続く薬局があり、修道士さんが自然薬品を調薬、販売している。記念にバラのエキスのシロップをいただいた。
体の中がきれいになりそう~。
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by organvita | 2008-05-19 19:04 | 見た弾いたオルガン | Comments(2)
Commented by arpa at 2008-05-20 00:04 x
ジェノバの演奏会、お疲れさまでした。
おっちゃんになったDavideの写真もアップされるかと、楽しみにしてたのに・・・。ちょっと残念。
Commented by organvita at 2008-05-20 07:32
arpaちゃん。おっちゃんDavideの写真、載せれなくてごめん。あんまりいいショットのが撮れなかったの・・。またメールで送るよ!
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