ドロミテ横断のシゴトその3  コルティーナのオルガン

コンサート当日、なんとなく落ち着かなくて午前中に教会を覗きにいくと、外にすごい人だかり。ブラスバンドの響きが石造りの町中にこだましている。お祭りだ!
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中に割り入ってみると、山の民族衣装を着たブラスバンドが賑やかに演奏中。そして白い天使たち!周りを取り囲む人たちも何気におしゃれに着飾っている。そう、今日はこの町のプリマ・コムニオーネ(Prima Comunione)の日。カトリックのお祝いで、7~8才の子どもが初めてミサで聖餐式に与るのだ。この後みんな教会内に移動しミサに参列する。子どもの成長を親戚揃って神の前で祝うということだから、日本で言えば七五三みたいなもの。宗教が変わっても、人間が根本的に持つ気持ちや祈りは全世界共通だ。
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f0161652_18334171.jpg美しい民族衣装に身をまとって演奏する町の楽団員たち。アニメソングもあり。

f0161652_18343492.jpg全然聴かずにおしゃべりに夢中な天使たち。
どの国の天使も同じか・・。

親たちも我が天使の写真撮影に余念がない。
どの国の親も同じか・・・。
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美しかったので、写真を撮らせていただいた。はにかんだ娘さんかわいい。「コピー商品は作らないでね」と辛口のママ。私は中国人ではありません。
ミサが終わるのを待っている間に昼食を済まし、教会へ。サン・フィリップ&ジャコモ教会。
やっと私たちの練習時間。教会内はピンクで統一された美しいバロックスタイル。
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恒例、オルガニストの階段。洞窟みたい。オルガンへの道のりは細く、暗い・・・?
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上に上るとかなり広いバルコニーが。その真ん中に演奏台。この楽器はかなり大型。
54ストップ、3段鍵盤&ペダル。パイプ総数約3000本。南チロルの工房マウラヒャー社(Mauracher)1954年制作。A.ゼーニ(Andrea Zeni)2002年修復。
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演奏台から見た教会内部はこんな感じ。背中側にパイプケースが鎮座。前回のオルガンと見比べていただくだけでもわかるかと思うが、本当に一台一台の仕組みや音色が違うので、夜の演奏会に向けて、早速このオルガンの持っている「素材」を試しながら、演奏する曲の音作りをしていく。このシンフォニックなオルガンのために私たちが用意した曲は、ドイツとイタリアのロマン派の作品、そしてA.へッセのオルガン連弾作品。
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ブログを始めてからいつもに増して写真を取る回数が増えてる私をみて半ば呆れている夫が、「これブログに載せたら?」と私を呼んだ。なんと、このオルガンにはイキな名前のストップが!私「はい、写真撮るからどいて~」。全く練習になってない。
ストップ番号(上の数字)4番:Flauto del bosco(森のフルート)
               23番:Flauto delle Dolomiti(ドロミテのフルート)
どちらも素朴で柔らかい響きがした。
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演奏台左側には電話つきテレビ?練習に疲れたらこの電話で出前とか頼むと(できればピザより盛りそばがいいな)ここまで持ってきてくれて、テレビで連ドラ見ながら、CMの間にまたちょこっと練習でもしとくか、なんてことは残念ながらありえない。ほんと残念。
このテレビには、ミサ時の遠い祭壇での様子が映し出され、オルガニストはこれで弾くタイミングをチェックしながら演奏しているのだ。オーケストラとの演奏のときに指揮者を映すこともある。電話は祭壇脇の部屋と繋がった内線電話で、教会が広くて一々往復できないので、この電話でミサの諸事項を神父と連絡し合う。今日の賛美歌の番号は?とか。
右側にある黒い計算機のようなものは、ここに賛美歌番号を入力して送信すると、教会内の電光掲示板に映し出される仕組み。この操作を間違えると誰も歌ってくれない・・・。
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バルコニーで聴こえる音やバランスと、教会やホール内で聴こえるそれとは、全く違うことが多い。オルガンは建物あっての楽器で、その残響もすべて含めて音作り&音楽作りをしていく。バルコニーで気持ちよく弾いてても下では大変なことになっていた?!なんてこともあり得るから、今回も夫と私はあの細い階段を十何往復もしながら、一人が上で弾き、もう一人が下から「バランス悪い」とか「もっと高音部増やせない?」とか「そのメロディの音イマイチ。他のストップないの?」とか「もっとはっきり弾かないと残響でなんだかわからん」とかなんとか言い合う。今回は相手が身内だから、言い過ぎたりして険悪なモードになりかけたりした(?!)が、その曲の背景、オルガニストの趣味や癖を察知して相応しい助言をすることは、音作りの際のアシスタントの役割として大変重要。なので大抵、アシスタントはやはり同じオルガニストか、オルガンのことをよくわかっている人に頼むことになる。譜めくりだって、それだけではなく、微妙なタイミングでストップを追加してもらったり減らしてもらったり、沢山の鍵盤とペダルの演奏で対応しきれないオルガニストの片腕となって働いてもらうのだ。
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そんなことをやっているとあっという間に4時間経過。ぶっ続け。小さい脳みそが「もう限界」と指令してくる。でも音作りをなんでもかんでも終わらせないとコンサート弾けない。「時間足りませんでした」とは言えない。そんなんで、どうにかすべての音色の組み合わせを決めると、それを今度はコンピューターに一々記憶させていき(コンピューターがすべてのオルガンについている訳ではないので、その場合はもっと複雑)、それを自分の楽譜にも「この小節からこの番号の音色」という風にメモっていく。私は「Post It」派だが、オルガニストによってメモの仕方は三者三様。弾く鍵盤の場所も同時に記す。そしてここから初めて文字通りの「練習」開始。まだ数時間しか知り合っていないこの楽器の魅力を最大限に引き出せるよう、少しでも慣れるように弾き込んでいく。

いつも当たり前のこととしてやっているが、改めてこうやって書き出していくと、オルガニストって本当にすごい地味な作業をコツコツやってたんですね~。
世界中のオルガニストに乾杯!!
あ、乾杯はコンサートのあとで。
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そしてやっとコンサート。私たちの他に、この地域を拠点として活躍するアカペラ合唱団と金管アンサンブルの演奏もあった。無名のグループだがかなり上手。残念ながら雨が降り始めた夜9時からのコンサートにはお客さんまばら。それでもヴァリエーションに富んだ素敵なコンサートだった。私たちも久しぶりにシンフォニックな大型の楽器を気持ちよく弾けて大満足!
その後簡単なパーティーが用意されており、夫は早速気持ちよくワイン飲んでる。私が帰り運転するってことらしい。コルティーナ出発夜11時、恒例イタリアの道表示の悪さに町中を3周迂回させられ(!!)一時間経過。やっと町から脱出、雨と霧で見通しの悪い山道をゆっくりゆっくりと車を走らせる。対向車なし。夫は気持ちよく横で獏睡中。その間、野生のシカ2匹と野うさぎに遭遇。

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by organvita | 2008-05-06 19:00 | 見た弾いたオルガン | Comments(4)
Commented by gomamama at 2008-05-07 05:03 x
ブラボー愛ちゃん!すごいっ。いっきにこれだけ中身の濃いレポートを。。。*0*!
いつも思っていることなんだけど、やっぱり、鍵盤弾きの人の頭の回転と使い方って、スペシャルだわ~!とくにオルガニストが一番すごい。
私の頭の使い方が如何に緩慢かがわかったわ~!
コムニオーネの様子もグッドです!
だんな様の半身が。。。お元気ですか?ふふ。。。演奏なさったオルガンは、シェフの御手が入っているのね。いつかだんな様の作品&修復なさった楽器がお目にかかれるといいな^^
Commented by yoshi at 2008-05-07 22:03 x
愛ちゃ~ん☆☆ご無沙汰しております。
ブログ開設おめでとうございます^^
早速遊びにこさせていただきました。

遥か日本からだと愛ちゃんのご活躍を耳にこそすれ
なかなか想像できなかかった私。

このブログのおかげで愛ちゃんが日々
どんな文化に触れ、繊細なオルガンのお仕事をされているのかを
とても身近に感じることができました☆ありがとう^^

お写真もキレイです。
また楽しみに遊びにこさせていただきますね。


Commented at 2008-05-07 22:07 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-05-07 22:19
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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