G.ヴェルディの町ブッセート Busseto を訪ねて

夏の話ですが、リグリアからの帰り道、
ヴェルディ所縁の町ブッセートBussetoに一泊した。

秋にはヴェルディ・フェスティバルの客でごった返すというこの町も、観光シーズンから外れている夏は自然体。道路や広場に椅子を並べ、夜遅くまで楽しげな町の人たちの様子がすっかり気に入ってしまった。ここは町の広場、もちろん名前はPiazza Verdi。
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町には至る所にヴェルディの面影が。町中がヴェルディ色。
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飛び込みで泊まった宿「i due foscari」の朝食ルーム。
このホテル名はヴェルディのオペラ(「二人のフォスカリ」)。
お部屋も今にもヴェルディが出てきそうなレトロなお部屋。
このホテルは、ヴェルディのオペラを常に歌ってきたテノール歌手Carlo Bergonziが開業し、今はその息子が営なんでいる(レセプションにいるおじさんがその人)。
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町の広場に面したヴェルディ劇場 Teatro G.Verdi。ガイドさん付きで見学できる。
この劇場は、生前にすでにヨーロッパ中に名声を博していたヴェルディにあやかって、
市が建築したもの。杮落としにはオペラ・リゴレットが上演され、一回入り口のすぐ左横のボックス席はヴェルディ氏に贈呈された。
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しかしヴェルディは、なんと一度もこの劇場に足を運んだことはなかった。市に対して怒っていたからである。
何故かというと、ヴェルディの一人目の妻Margherita(この町出身で、若いヴェルディのパトロンだったAntonio Barezziの娘)の死後、ヴェルディがソプラノ歌手Giuseppina Strepponiと再婚したことを市民が歓迎しなかったからだ。小さなブッセート市にとって、町の有力者の援助を受けて大物となったヴェルディは大きな自慢だったわけだが、その後ヴェルディが他の女性と再婚し町に戻ってきたたことが全く面白くなかったらしい。その村八分振りはひどいもので、信仰深かったGiuseppinaが町の教会に行くとミサは中断され、全員が出て行くか奥さんが出て行くかと迫られた程だったとか。
そんな町がヴェルディにあやかって町興しの劇場を作っても、本人は全く見向きもしなかったのは当然。

ここは、広場を挟んで反対側にある、「Museo di casa Barezzi」。
裕福な食料雑貨店主で、音楽を愛し、若きヴェルディを支援した人物 Antonio Barezziの住居。青年ヴェルディはこの家に住み、またその後の勉学もこの人物が金銭的に支援した。今はヴェルディ博物館になっており、コンサートも開かれている。ヴェルディが弾いていたピアノもある。
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ヴェルディ所以の貴重な資料もずらっと充実。実のところ、オペラやヴェルディにあんまり興味なかった私でも、しっかり楽しめた。
定年を迎えここでボランティアで働いているおじさんの話がこれまた面白かった。相当のオペラファンでヴェルディ・オペラの生き字引のような彼は、子供の頃からヴェローナの野外オペラに通い詰めていたんだとか。「昔の歌手はよかった昔はよかった」を連発しながら遠い目で懐かしそうな表情だったのが印象的だった。
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ブッセートから車でちょっといった、ここはロンコレ村(Roncole)のヴェルディの生家。
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すぐ向かいにある教会。ここでヴェルディはオルガニストから始めての音楽の手ほどきを受けた。
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ヴェルディが弾いていただろうオルガン。オルガンに上がる小部屋は資料室。
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ちょうどオルガニストがいたので、頼んで見せてもらった。ラッキー。
イタリアらしい柔らかい音色のする優しいオルガン。
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村でヴェルディの本でも記念に買おうかと思って入った売店で、店主のおじさんがヴェルディについて40分くらい延々と熱弁を振るいはじめ、本には載っていないだろうヴェルディの愛人関係とか、この村のOOさんがヴェルディの親戚と結婚したとかだのという話を聞かせてくれた。とにかく、つい最近までヴェルディが生きていたんだなと感じさせるような生々しい話があちこちで見聞きできて(ザルツブルクのモーツァルトとはまた一味違う)、
またそれを誇りに生きているのであろう村人達が幸せそうで、なんだか居心地がよく、
ちょっと宿を取るつもりで立ち寄った町だったのに、結局丸一日遊んでしまった。

ちなみに、この村Roncoleは、ドン・カミーロの舞台になったところ。作家のGiovanni Guareschiが、ロンコレ村のトラットリアで、司祭と市長が喧嘩しているのを見たことが、あの映画の発端なんだって。
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Commented by marcheselli at 2010-10-06 00:21
ブッセートにいらっしゃってたのですね!!今パルマではVerdi Festivalです。食の秋、そして数年前から大々的にフェスティバルを行っています。なかなかチェントロに行く機会はないのですが、、、。食欲の秋、芸術の秋ですね。ブッセートもむかーし何度か行きましたが、近いと逆になかなか行かなくなってしまうものです。ゆっくりとオペラでも観に行きたいものです。
Commented by thallo at 2010-10-06 02:29
愛さん、こんばんは。
Busseto行ってみたいっ。私、Verdi大好きです。やっぱり彼のオペラは、あまり知られていないアリアもいいですよね。一発で「これはVヴェルディ!」と分かるものね。
先週、42台のキーボードコレクションのハウスに行ってきたの。愛さんがここにいたら泣いて喜ぶかしら、と思いました。ショパンや、リスト、バッハファミリーが所有していたハープシコードや、ピアノ。。全部でおいくらになるんだろうね。
今年は無理だけど、今度イタリアに帰った時には、是非、Bassetoいってみたいな、と思います。ご飯食べながらでも、歌手が歌うVerdiを聴く、、最高でしょうね。
Commented by mamadance at 2010-10-06 06:30
すごく詳細なレポート、ふんふんと読ませていただきました。
ヴェルディ、すごく人間くさく感じました。

オルガンも見られてよかったですね。
『陽気なドン・カミロ』ですね。
続編含め観なくちゃ!
Commented by organvita at 2010-10-07 20:49
marcheselliさんへ。
なんだかイタリアらしいというか、とても心地よい地方ですよね。景色はいいし美味しいし。いつも長旅の途中で北上する前に立ち寄る程度なんですが、今度は一度ゆっくりと滞在してみたいねと夫と話しています。住んでいるなんて羨ましい~!ブログで情報いただいて夢は膨らませています(^0^)。
Commented by organvita at 2010-10-07 20:51
thalloさんへ。
ヴェルディお好きなら、きっと気に入りますよ!いつか旦那さまと帰省の時に行ってみてください!ヴェネトからもそんなに遠くないですし。
キーボードコレクションの記事、読みました。ヨダレ出そうです・・・!
イギリスだと他には、エジンバラの博物館のコレクションが有名みたいですよ。いったことないんですが・・・!
Commented by organvita at 2010-10-07 20:53
mamadanceさんへ。
本や楽譜の中だけではなくて、こうやって間近で感じられるのは嬉しいですよね。相当人間っぽい?!人だったみたいです。殺人容疑もあるんですって。どこまで本当かはわからないですけど!
日本では「陽気なドン・カミロ」っていうんですね。昔の映画、いいですよねー。
Commented by Yozakura at 2017-02-18 01:38 x
吉田さま
 先程の投稿序に、過去の日記を読み飛ばしていたところ、この音楽探訪ツアーの紀行文に遭遇しました。作曲家 Verdi に関する知られざる逸話の数々、大半が初めて接するもので大いに楽しめました。
 例の著名な動画サイトには、彼の傑作の演奏動画が数多掲示されており、私も「椿姫」、「アイーダ」などを時々聴き込みます。財産の多寡よりも、社会的な地位の高低よりも何よりも、人間らしい生活を尊重するイタリア人の価値観が、その儘に投影された彼のオペラは誠に親しみやすく、観て居て楽しいのです。
 素晴らしい町と Verdi の事績の紹介、有難うございました。また時間を設けて、貴ブログの過去記事を渉猟します。お元気で。
Commented by organvita at 2017-02-20 08:26
yozakuraさんへ。
昔の記事まで遡ってくださりありがとうございます。
自分で書いたことをずいぶん忘れていたので読み直して色々思い出しました。懐かしいです☆
by organvita | 2010-10-05 22:06 | イタリア紀行 | Comments(8)

北イタリア・ドロミーティ渓谷で暮らすパイプオルガン弾き吉田愛のスローライフを綴っています。猫のバンブー♂も度々登場。


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